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欧州を歴訪している中国の温家宝首相は27日、滞在先のロンドンで、中国国内の格差拡大と腐敗汚職の問題を率直に認め、政治改革の必要性をこれまで以上に強く主張する一方、中国の人権状況を非難する英国やメディアには従来通り激しく反発してみせた。共産党内の改革派と保守派の抗争が影響しているもようだ。
■腐敗認め「政治改革推進」
【北京=矢板明夫】温家宝首相は27日、ロンドンの英王立協会で「未来の中国の行方」と題して講演した。中国外務省が公表した講演内容によると、温首相は「今日の中国には官僚の腐敗、分配の不公平など多くの問題が存在しており、政治改革を推進するほか解決する道はない」と強調した。
中国共産党指導部内で保守派が台頭する中、孤立感を強める改革派の温首相が、外遊の機会を利用して、国内外に政治改革の必要性を改めて主張したものとみられる。
温首相は講演の中で未来の中国像について、「民主政治が十分に実現された法治国家であってほしい」と語った上で、「真の民主政治には自由が欠かせない。真の自由には経済的権利と政治的権利の保障が欠かせない」と強調。今日の中国では人民の経済的・政治的権利が保障されていない実態を暗に認めた。
この発言は中国の指導者のこれまでの主張と矛盾しており、中国政府の公式見解でないことは明らかだ。保守派からの批判は不可避といえる。
温首相は昨年秋以降、外国メディアとのインタビューや記者会見の場で、「言論の自由と政治改革の必要性」を繰り返し強調してきた。
しかし、党内から「欧米社会の価値観を中国に導入しようとしている」と批判されたほか、共産党機関紙「人民日報」にも「政治体制改革の停滞などという見解は事実と合わない」と正面から否定された。
温首相は2003年の就任以来、欧米や日本と協調路線を取りつつ、改革を推進しようとしたが、保守派の抵抗に遭い、政治改革分野ではほとんど何もできなかった。共産党内の保守傾向は強まり、最高指導部の政治局常務委員会で政治改革を主張しているのは温首相のほか誰もいない。
任期残り2年を切った温首相が最近、改革の必要性を繰り返して訴える背景には、自らの手で政治改革を少しでも推進したいという焦りがある。さらに、後継者が決まる党大会を来年秋に控え、改革派の存在感を示し国民に支持を呼びかけたい思惑もありそうだ。
■非難に反発 人権問題「指弾すべきでない」
【ロンドン=木村正人】温家宝首相は27日、ロンドンでキャメロン英首相と会談した。非公式にノーベル平和賞受賞者、劉暁波氏らの釈放を求めたキャメロン首相に対し、温首相は同日の共同記者会見で「人権に関して両国は相互に敬意を払い、他国を指弾すべきではない。説教もすべきではない」と反発、人権批判の矛先を収めない英国へのいらだちをあらわにした。
28日付の英紙フィナンシャル・タイムズは1面トップで「温首相がキャメロン首相の批判をののしった」と報じたほか、他の英各紙も温首相の発言を大きく取り上げた。
温首相は記者会見で、中国の人権問題について質問した英民放24時間ニュース局スカイニュースの記者に、「そうした疑問は無知から来る。5千年の歴史の中で筆舌に尽くしがたい苦難を味わってきた中国は、決して他国に説教するように話さないことを学んだ」と気色ばんだ。
温首相は「中国は経済発展だけでなく、政治改革や民主主義の向上も求めている」とも強調した。
中国は温首相の欧州歴訪に合わせて、著名芸術家、艾未未(アイ・ウェイウェイ)氏を保釈。政権転覆扇動罪で服役していた市民活動家、胡佳氏も刑期満了で出所させ、人権問題の改善をアピールしたつもりだっただけに、英側の変わらぬ追及にいらだちが募ったようだ。
英紙によると、中国外交筋はドイツ、フランス、スペイン、イタリアに比べ、英国は中国に批判的だと不満を抱いているという。
英中首脳は一方で、総額約14億ポンド(約1800億円)相当に上る商談の契約では合意した。
温首相は28日、ベルリンでメルケル独首相とも会談した。ベルリンからの報道によると、中国企業が欧州航空機大手エアバスのA320を62機購入するなど、両国は計150億ドル(約1兆2千億円)以上の商談契約を締結。さらに中国は、ユーロ導入国の国債を引き続き購入し、ギリシャ危機で揺れるユーロを支える方針を示した。
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